
HTM講座第5回 「証明の設計図のつくりかた」
How to Think like a Mathematician-「HTM講座」の第5回をお送りします。
前回は、「数学的推論」について、定義と基本構造をレクチャーしました。
それをふまえて今回は、実際に推論してみる、証明をつくってみる、という体験をしてみましょう。
おさらいすると、数学的推論は、「ある前提(公理や既知の命題)から、論理的に正当な方法で結論(命題)を導く思考の過程」です。
また、推論を「形式体系」に落とし込んで記述する必要がある、ということもお話ししました。
形式体系には、命題論理、述語論理などの「形式言語」や、モーダスポネンスなどの「推論規則」がある、ということもお伝えしましたね。
今回から、そういった数学的推論を構築するために必要な「言語」や「規則」を学んでいきましょう。
特に今回は、「形式言語」、そのなかから「命題論理」に焦点をあてて、「証明」という営みを体感していただきます。
内容としては、「命題論理」を使った「証明の設計図」のつくりかたを学び、証明の形を数学的なメソッドに沿って実際つくってみる、という小さな実践をしていただきます。
では、本題に入りましょう。
「命題論理」の話に進む前に、「形式体系」というのは「記号だけで書かれた論理式」でしたので、まず論理記号を確認します。
【基本的な論理記号】
P → Q: PならばQ(含意)
P ↔ Q: PとQは同値
¬P: Pではない(否定)
P ∧ Q: PかつQ(論理積)
P ∨ Q: PまたはQ(論理和)
これらの記号を使うと、たとえば以下のような日常の現象を構造的に表現できます。
例:
「雨が降ったら、試合は中止される」
→ 命題としては、「雨が降る:P」「試合が中止される:Q」の2つの命題を含んでいる。
→ 論理構造は、 P → Q
ごく簡単な例を挙げましたが、ポイントとしては「思いつき」で動かず、まず「論理構造」を確認する、ということ。「正しいと思う」ではなく「形式的に導けるか」を問うのが数学的推論、つまり数学的に考えるということです。
では、つづけて「命題論理」とは何か、を説明します。
命題とは、正しいか正しくないかが明確に定まっている主張のことです。正しい命題を「真」の命題、正しくない命題を「偽」の命題といいます。上の例では、「雨が降る」「試合が中止される」が、命題であり、条件を満たしているかどうか、明確に判定することができます。
そういった命題としてのかたちを備えている「文」を組み合わせて、論理的な関係を記述したものが「命題論理」です。
さて、では実際に、別の簡単な例を使って「証明」を作ってみましょう。
【命題】
生きている:P
死んでいる(生きていない):Q
【前提】
「生きている:P」または「死んでいる(生きていない):Q]のいずれかの状態をとる。
この材料を使って「PまたはQ」が真だと仮定し、「Pではない」場合に残る可能性としてQが結論となる、という論理構造を記号で表現してみてください。
つづきはまた、次回。