HTM講座第7回 「精密さと表現力のデザイン」

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2025/05/08 06:30

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HTM講座第7回をお届けします。

前回は、命題論理を使って「直感を論理のことばに置き換えてみる」実践をしていただきました。

 

さて、今回は次のステップとして「述語論理」を取り上げます。

命題論理から述語論理へのステップは、単に「記号が増えた」ではなく、推論の“精密さ”や“表現力”が飛躍的に高まるという本質的な変化です。

 

それでは、次の文(命題)を、命題論理のみで表現してみてください。

「すべての偶数は2で割り切れる」

 

命題論理は、ひとかたまりの文をとらえるものなので、

「P:すべての偶数は2で割り切れる」

とする他なく、この文に含まれている「偶数とは何か」「割り切れるとはどういうことか」などの情報が抜け落ちてしまいます。

これでは推論の「構造」に踏み込むことができません。

 

さらに、命題論理の限界を理解するために、次の課題に取り組んでみましょう。

次の主張を命題論理でどこまで扱えるかを考えてみてください。

 

・すべての猫は哺乳類である

・チャチャは猫である

・よってチャチャは哺乳類である

 

→ 命題論理で扱うとすると、

P:すべての猫は哺乳類

Q:チャチャは猫

R:チャチャは哺乳類


それで、 P ∧ Q → R という形式で表現できそうですか?

これで成立するように思えるかもしれませんが、「で、チャチャはどこいった?」などの肝心な情報がごそっと抜けてるように感じませんか?

 

そこで、一歩進めて「述語論理」を使います。

個体:Chacha

述語:Cat(x), Mammal(x)

全称:∀x (Cat(x) → Mammal(x))

特定事実:x=Chacha

という表記ルールを当てはめてみましょう。

 

(ちなみに∀は「すべての」を表す「量化子」です。

∀xは、「すべてのxについて」という意味で、∃xは「あるxについて」となります)。

 

上の材料を使って、

∀x (Cat(x) → Mammal(x)),x=Chacha ⊢ Mammal(Chacha)

とし、「チャチャは哺乳類」という結論が形式的に導き出せました。

 

述語論理を使えるようになったことで、「対象」と「性質」の「関係」を記号で操作できるようになりました(さらに量化子を使って、「全体」や「一部」ということも表現可能)。

 

「ある男はすべての猫を愛している」を、

∃x (Man(x) ∧ ∀y (Cat(y) → Loves(x, y)))

と書いてみたりと、“精密さ”や“表現力”が飛躍的に高まるのを実感できます。

 

つまり、述語論理によって構造がみえてきて、より精密で深い推論ができるようになる、ということ。

また、前提から結論を論理的に導けるかどうかが形式によってわかる。つまり、証明の正しさを定めることができるということ。

 

これこそが「数学的推論」の本質であり、数学の骨格そのものといえます。

 

最後に応用問題を一つお出ししますので、ご自分で考えてみてください。

 

【問】 以下の命題を命題論理/述語論理で記述し、何が見えるか比較しましょう。

 

命題: ある偶数は素数である

 

次回、述語論理の世界をさらに深め、現代数学の構造の本質に迫ります。

 

 

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