
HTM講座第17回「ZFCで数を作ってみる(後編)」
前回、ZFCを使って、自然数( ℕ )→(順序対・写像)→整数(ℤ)→有理数(ℚ)まで作ってみました。
今回は、最後の工程の実数(ℝ)を残すのみです。
ℚ はすでに構成済み(ℤ×ℤ⁺ / ~)・・・これをどう活かして実数(ℝ)を構成するか・・・
◆ Step 4:実数(ℝ)の構成
実数とは、一言でいえば「数直線上に切れ目なく、連続に並んだ数」ですよね。
有理数だけでなく、無理数からも構成されるので、「√2 」のような数も含みます。
その性質からして、これまでのように同値類を作るようなテクニックでは上手くいかなさそうです。
そこで、
基本方針:
「実数は、有理数全体の集合ℚ を“境界”で分割することによって定義できる」
・・・構造になっているはずですので、以下この方針で攻めてみましょう。
◆有理数全体の集合 ℚ の「下半分(数直線上の境界より左)」に対応する集合であり、次の3つの性質を満たすA ⊂ ℚを作ります。
条件1:A は空集合でもなく、全体でもない ⇨ ∅ ≠ A ≠ ℚ
条件2:A は下に閉じている ⇨ ∀x ∈ A, ∀y ∈ ℚ(y < x)⇒ y ∈ A
(A に入っている数より小さい数は、すべて A に含まれることにする)
条件3:A は最大元を持たない ⇨ ∀x ∈ A, ∃y ∈ A で x < y
(A に「ちょうどこれが境界」という最大の元が存在しない)
そして、その「境界」にあたるところでざっくざっくと切ってゆけば、今回のターゲットである実数(ℝ)の出来上がり!です。
例:
√2 の場合:
A = {q ∈ ℚ | q < 0 または q² < 2}
・この集合は、√2 より小さいすべての有理数を集めたもの
・境界(√2)自身は有理数ではないが、A はその「左側部分を切断したもの」と考える
⇒こうした A ⊂ ℚ を「実数」とみなすことができます。
◆なぜこれで「実数」になるの?
これは「デデキント切断」といって、有理数の間にある「穴」を埋める方法です。
・有理数は稠密だけど完備ではない(例:√2 は存在しない)
・でも、有理数たちの「切断(下限の集合)」を考えれば、
・たとえ√2自身が有理数でなくても、「それより小さい有理数たちの集合」は定義できる
⇒それを「√2 に対応する実数」とみなす、という手順
◆実数の構成(集合論的視点まとめ):
・ℚ はすでに構成済み(ℤ×ℤ⁺ / ~)
・実数 ℝ は、デデキント切断の全体として定義: R:={A⊆Q∣A はデデキント切断}
・・・ちょっと複雑でしたが、どうでしょう?「切断」という発想はイメージできましたでしょうか?
◆補足:加法・乗法などの定義
デデキント切断 A, B に対して、演算も集合論的に定義されます:
加法:A + B := {q + r | q ∈ A, r ∈ B}
乗法(正の場合):A × B := {q·r | q ∈ A, r ∈ B} など
このようにして、切断同士の演算により、実数全体に加法・乗法が定義できます。
以上、複数回にわたって集合を使った数の作り方をレクチャーしました。
そして、次回は集合論について最後の話題、集合の大きさ(濃度)についての講義です。